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井伊直弼と茶の湯
アンカー 3
井伊直弼は埋木舎時代、巷で「茶歌ポン」と呼ばれていました。これは茶の湯、和歌、謡曲の鼓の音「ポン」であり、直弼はそのいずれにも造詣が深かったのですが、特に茶の湯においては、その精神的バックボーンは禅の修行と密接な関係がありました。直弼は13歳の頃から佐和山の麓にある井伊家の菩提寺である曹洞宗の寺、清凉寺に参禅していました。道鳴禅師、師虔禅師につき禅の修行を積み、さらに二十三世住職の高僧・仙英禅師に師事して奥義を究めました。「只管打坐」、ただひたすら座禅をすることにより大悟徹底の域に達し、仙英禅師から印可証明を授けられています。直弼の崇高な人格や高邁な 識見、そして強い精神力はまさに禅の心によって創られたのです。直弼の茶の湯というと、著書の茶湯一会集にある「一期一会」「独座観念」「余情残心」という言葉が広く知られていますが、その根底には常に禅の精神があったのです。

布袋画賛 井伊直弼筆
